■酸化と還元
・酸化と還元は必ず同時に起こる。
例えば,物質が酸素の存在下で燃えるとき,物質が酸化されると同時に酸素が還元される。

■酸化剤、還元剤のイメージ
・酸化剤…相手から電子を奪ってくるもの。自身は還元される。キャッチャーのイメージ。
・還元剤…相手に電子を与えるもの。自身は酸化される。 ピッチャーのイメージ。

■酸化数の概念
・共有結合性の物質における電子の状態を表現するために,酸化数という概念をつくった。
(共有結合性の物質は電子の授受が分かりにくいため,酸化還元の関係もわかりにくい。)

■共有結合性の物質とは?
・二酸化ケイ素、水、遷移金属(錯イオンをつくる配位結合)、有機化合物など。

■共有結合性物質の酸化数の考え方。
☆ポイントは共有結合性物質の電子状態は電気陰性度で考える!
・電気陰性度の大きい方の原子が電子を引き寄せる。→原子の電子状態は,結合していないときよりも増えてい る→還元されている。→酸化数は減る。
・電気陰性度の小さい方の原子が電子を取られる。→原子の電子状態は,結合していないときよりも減っている →酸化されている。→酸化数は増える。

■金属と還元剤
・金属は電子を放出してイオンになりたがる。つまり 還元剤 になる。

■半反応式
・電子が生まれる反応(酸化反応)と電子を消費する反応(還元反応)は必ず同時に起こり、その片方ずつを取り出して書いたものだから半反応式。

■本当の酸化数の求め方
@電子式を書く。
A電気陰性度の大きい方に電子を偏らせる。
B注目する原子の電子数を数える。
Cもとの最外殻電子の数と比較する。

■酸化還元反応式の作り方
@半反応式を作る。
(a)両辺の酸素原子の数を水の形で合わせる。
(b)両辺の水素原子の数をH の形で合わせる。
(c)両辺の総電気量をe で合わせる。
Aイオン反応式を作る。
・電子を消すように最小公倍数をかけて2つの式を足す。
B化学反応式を作る。
・両辺に相棒のイオンを加える。

■酸化数と安定
・安定ではないということは反応しやすいということ。

■ニクロム酸カリウムと過マンガン酸カリウム
・ニクロム酸カリウムと過マンガン酸カリウムは硫酸酸性で用いる。

なぜ硫酸酸性?
・ニクロム酸カリウムと過マンガン酸カリウムを酸化剤として用いるときには,溶液を硫酸で酸性にするという こと。
☆酸性条件が必要なのは,この2つのそれぞれの働きを示す反応は,より多くの水素イオンを必要とするため。

なぜ,硝酸や塩酸ではダメ?
酸化還元反応は酸化還元滴定など定量的に扱われる。つまり,
・硝酸の場合,硝酸が酸化剤として作用してしまい,酸化還元滴定の定量性を失ってしまうから。
・塩酸の場合,塩酸が還元剤として作用してしまい,酸化還元滴定の定量性を失ってしまうから。

でもなぜ硫酸はいいの?
・硫酸は,加熱した熱濃硫酸や濃硫酸は酸化剤となるが,硫酸のままでは作用しないから。

■過酸化水素と二酸化硫黄
・過酸化水素と二酸化硫黄は酸化剤にも還元剤にもなりうる。
☆覚え方
・過酸化水素は通常は酸化剤であるが,ニクロム酸カリウムと過マンガン酸カリウムに対しては還元剤として働 く。
・二酸化硫黄は通常は還元剤であるが,硫化水素に対しては酸化剤として働く。

■酸化還元と硫酸
・硫酸は特に水溶液中ではまったく酸化還元反応しない。水溶液中においては電気エネルギーをどんどん与えても、硫酸イオンは電気分解(酸化還元)されない。酸化剤として働けるのは、溶媒の水がほとんどないとき、つまり濃硫酸のとき、かつ加熱して反応性を高めたときに限定される。 

■おもな酸化剤
・二クロム酸カリウム(硫酸酸性水溶液): Cr272−→2Cr3+
・過マンガン酸カリウム(硫酸酸性水溶液): MnO4−→Mn2+
・二酸化マンガン: MnO2 →Mn2+
・熱濃硫酸: H2SO4 →SO2
・濃硝酸: HNO3 →NO2
・希硝酸: HNO3 →NO
・ハロゲン単体: X 2 →2X
・オゾン: O3 →H2
・酸素: O2 →2H2
・過酸化水素: H22 →2H2
・二酸化硫黄: SO2 →S

■おもな還元剤
・硫化水素: H2S→S
・シュウ酸: H224 →2CO2
・金属単体(軽): Na→Na
・チオ硫酸ナトリウム: 2S232− →S462−
・塩化スズ(U): Sn2+ →Sn4+
・二酸化硫黄: SO2 →SO42−
・過酸化水素: H22 →O2

■酸化数を決めるための規則
@単体中の原子の酸化数は0とする。
A化合物中の水素原子の酸化数は1とする。(ただし金属の水素化合物中の水素原子の酸化数は−1となる)
B化合物中の酸素原子の酸化数は−2とする。(ただし過酸化物中の酸素原子の酸化数−1となる)
C化合物中の原子の酸化数の総和は0とする。
D単原子イオンの酸化数はそのイオンの価数に等しいとする。
E多原子イオン中の原子の酸化数の総和はそのイオンの価数に等しいとする。

■酸化還元反応の見分け方
@中和反応は酸化還元反応ではない。
A単体→化合物。化合物→単体。は酸化還元反応。(単体中の原子の酸化数は0で、化合物中の原子の酸化数は一般に0ではないから)
B一般に弱酸、弱塩基、揮発性酸の遊離による気体の発生は酸化還元反応ではない。
C沈殿形成反応は酸化還元反応ではない。